研究概要 |
小腸移植の臨床成績はいまだに満足のいくものではない、特に他臓器と比べると急性拒絶反応の制御が困難なため、その改善のためラット小腸移植のモデルを使用して、拒絶の改善を研究している。今年度は現在一般的に使用されているタクロリムス(FK506)と組み合わせて、臨床に近い免疫抑制剤投与を行い効果を判定した。 ケモカインレセプターCCR5及びCXCR3の阻害剤であるTAK779とFK506をラット小腸移植モデルに投与を行いグラフト生存期間,EACSによりリンパ球のCCR5, CXCR3発現,real-time RT-PCRによりCCR5, CCL5, CXCR3, CXCL10mRNA発現,リンパ球混合試験(MLR)の変化,IFN-γ分泌能の変化を検討した。また,TAK779とFK506併用によるグラフト生存期間を検討したTAK-779とFK506の併用ではグラフト生存期間は18±1.5日で有意に延長した。FACS解析においてFK506投与群のCD4^+, CD8^+T細胞数がグラフトパイエル板,脾臓,腸間膜リンパ節で有意に減少した.T細胞におけるCCR5発現またはCXCR3発現は,非投与群に比しTAK779投与群で有意に抑制されたが,FK506群と非投与群とでは変化を認めなかった。MLRおよびIFN-γ分泌は非投与群とTAK506群に比しFK506群で有意に抑制を認め,非投与群に対してTAK779群は抑制傾向であった。 TAK779はCCR5及びCXCR3を抑制する効果を示した。一方,FK506は非投与群に対してCCR5及びCXCR3の発現に変化を与えなかった。TAK779とFK506の併用によりリンパ球の浸潤抑制および増殖・エフェクター能抑制による相乗効果により、小腸移植の拒絶抑制の改善が明らかになった。
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