研究概要 |
癌と炎症に関連するmicroRNAを網羅的に検証するため、手術前後の白血球、炎症局所の白血球および単球由来の細胞株(THP-1)を用いて、サイトカインとmicroRNAの発現を解析した。外科手術後のドレーン廃液中の白血球は、血清中と比してIL-8が大量に分泌され、激しい炎症が局所で惹起されていることが示唆された。microRNAも同様に過剰に発現しており、この中でmiR-21,146aなどは炎症のシグナル伝達分子をターゲットとし、炎症を負に制御するため、やや遅れて発現していた。THP-1において、LPS、TNFα, IL-1β刺激よりmiR-21は濃度依存的に発現が増強した。 炎症性サイトカインのIL-6の癌細胞に与える影響について、大腸癌・膵臓癌細胞を用いて検証を行った。IL-6がSTAT3の活性を介して、癌の進展(増殖・浸潤)に関与していた。大腸癌細胞株にIL-6刺激によりlet7aの低下が確認された。一方、miR-146aはIL-6により増強された。他にも、炎症・癌に関連するmicroRNAが同定され、targeting therapyに向け、microRNAの役割・意義(Phenotype)を明らかにしていく必要がある。このことが、microRNAを利用した炎症・癌への治療の開発・応用につながる可能性がある。
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