研究課題/領域番号 |
20591531
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
鄭 允文 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80404995)
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研究分担者 |
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (70292555)
上野 康晴 横浜市立大学, 医学部, 助教 (60375235)
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キーワード | 消化器癌 / 幹細胞 / フローサイトメトリー / 移植 / 腫瘍形成能 |
研究概要 |
近年、正常組織と同様、癌組織においても癌幹細胞を頂点とした階層的な細胞社会が存在することが明らかになった。癌幹細胞は化学・放射線療法に耐性を有し、転移・再発の起点となる細胞であると考えられている。従って、癌幹細胞を標的とした治療戦略を構築することで、癌の再発・転移の制御が可能になるのではないかと期待されている。その為には、癌幹細胞特異的な解析が不可欠であり、同細胞の高純度な分離が必須であることは言うまでもない。大腸癌においては既にCD133等の表面抗原の発現を指標として細胞の分離・同定が試みられている。しかし、先行研究における大腸癌幹細胞の分離純度は低く、特異的な分子発現を明らかにすることは困難である。従って、CD133に加え複数の表面抗原の発現を指標に癌幹細胞の分離を行い、分離純度の向上の必要がある。本研究では大腸癌幹細胞特異的な解析を目標として、高純度な分離を試みた。臨床検体より得られた細胞集団についてフローサイトメトリー解析を行ったところ、CD133^+細胞をCD44の発現を指標に分画化可能であることが示された。次いで、腫瘍形成アッセイを行ったところ、CD133^+細胞およびCD44+細胞に腫瘍形成が認められた。また、CD133^+CD44^+細胞においては僅か100個の移植で腫瘍形成が確認され、癌幹細胞が純化されていることが示唆された。 癌幹細胞は化学・放射線療法に耐性を持つとされており、その原因の一つに癌幹細胞が血管から離れた位置に存在するという点が考えられる。CD133^+CD44^+細胞と腫瘍内血管の位置関係を解析した結果、腺管の管状構造の内腔面に局在するCD133^+CD44^+細胞が他の表現型を有する癌細胞と比して有意に血管から離れた位置に局在していることが示された。癌幹細胞の化学・放射線療法耐性が同細胞の局在部位に起因するものであるならば、それを標的とすることで癌の根治が可能になるかもしれない。
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