ヒト生体における細菌、ウイルスや癌細胞に対応する自然免疫応答は主に白血球分画中のマクロファージ、樹状細胞、好中球、NK細胞などが担っており、これらの自然免疫応答には免疫細胞表面上のトールライクレセプター(TLR)が深く関与していると考えられる。平成20年度及び21年度の研究にてヒト末梢血白血球におけるTLRの発現を解析した結果、CD14陽性細胞にてTLR4の発現が高度に確認された。このCD14陽性細胞をex vivoでGM-CSFとIL-4にて培養することにより抗原提示に働く樹状細胞が誘導され、TLR4からのシグナルによるType 1サイトカイン産生との関連が推測された。平成22年度では主にTLR4にリガンド分子が結合した後の細胞内シグナル伝達経路の変化を解析する目的で、ヒト末梢血白血球から分離したCD14陽性細胞及びCD3陽性T細胞におけるMyD88とTRAF6遺伝子の発現をリアルタイムPCRにて定量的に解析した。CD14陽性細胞、ex vivoで誘導した樹状細胞、CD3陽性T細胞のTotal RNAを抽出し、cDNAを作成して、MyD88及びTRAF6特異的プライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、各細胞におけるMyD88及びTRAF6 mRNA発現を定量的に解析した。さらにTLRリガンドのCpG、BCG-CWSにて刺激した後の各遺伝子のmRNA発現の変化を解析した。MyD88 mRNAはCD14陽性細胞においてT細胞の1.8倍と高く、BCG-CWS刺激にてさらに1.8倍に増加した。TRAF6はT細胞の0.7倍の発現量であったが、BCG-CWS及びCpG刺激にてそれぞれ1.4倍、1.25倍に増加が認められた。以上の結果よりTLRを介した刺激伝達によりMyD88及びTRAF6 mRNAの発現量の増加が確認され、Type1サイトカイン産生増強応答を示す結果と考えられた。
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