研究概要 |
現在腎臓移植は免疫学の進歩やタクロリムス等の免疫抑制剤の開発も有り成績も向上しているが、免疫抑制剤は有効域が狭く、また薬剤に対する生体反応にはかなりの個人差が認められ、これら薬物の反応性に影響を及ぼす因子として薬剤反応関連遺伝子の一塩基多型(SNPs)に就いての報告がされて来た。そこでシクロスポリン、タクロリムス等免疫抑制剤の薬物動態に影響すると考えられるCYPやMDR1等のSNPについて、当院での腎臓移植臨症例について解析し、その結果と実際のシクロスポリン、タクロリムス投与量と経過観察中に行われる腎機能検査値、薬物血中濃度や腎生検による病理組織学的所見と比較検討することにより、これらSNPと薬物に及ぼす影響、副作用との関連に就き臨床症例から検討し、免疫抑制剤治療のテーラーメイド化を目標とし計画を立案した。 倫理委員会で承認(平成20年11月28日)を受け、文書により研究同意を得られた128名の患者さんから提供された血液からDNAの抽出、解析はPCR法を原理とし蛍光標識したシトシン塩基を末端に持つQP(Quenching Probe)法によりSNPを全自動で解析できる装置得を用い、ターゲットとするSNP (CYP3A4*1B,4*16,5*3,MDR12677G>T,3435C>T)を検出する為の試薬を設計し解析を行った。一般健常ボランティア由来の22サンプル、及び研究協力者由来の128サンプルについて遺伝子多型の解析を行い、CYP3A4*1B,4*16では殆ど総てが野生型であるのに対し、CYP3A5では野生型が稀で変異型が半数以上を占めていた。 MDR12677,3435においても腎移植症例ではヘテロ型が約半数を占め、野生型は其々16%、30%程度を占めるに過ぎなかった。経過中の拒絶反応と遺伝子多型との関係は明らかではなかったが、今回解析した多型に加え腎移植で頻用される他の薬剤代謝に遺伝子多型の解析結果に基づき薬剤投与を計画し良好な結果も得られた。CYP3A5の遺伝子多型の解析はタクロリムスの投与量の参考になると示唆され、免疫抑制剤のテーラーメイド医療化に遺伝子多型の解析は役立つと考えられた。
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