研究概要 |
消化管吻合部創傷治癒促進の一連のメカニズムとして「電解質液の消化管内投与→消化管の蠕動運動促進→腸管壁のfibroblastsに対する機械的刺激(mechanical loading)→消化管吻合部でのコラーゲン合成能増大→消化管吻合部の創傷治癒促進」という仮説を提唱し,その機序を解明する研究に着手している.その進捗状況と成果について報告する.基礎的検討:(1)証明が完了した事象.上記の仮説を以下のごとく二分割する手法により証明を完了した.すなわち,「電解質液の消化管内投与→消化管吻合部の創傷治癒促進」(ラットを用いたin vivo実験)ならびに「fibroblastsに対する機械的刺激(mechanical loading)→消化管吻合部でのコラーゲン合成能増大」(ラット胃fibroblastsを用いたin vitro実験)として別個に検討を行い,私どもの仮説を立証した.この内容は,論文としてJournal of Surgical Researchにアクセプトされ,in pressの状態にある.(2)証明が完了していない事象.ラット小腸の蠕動運動を電気生理学的に解析する手技の確立に難渋し,打開策を模索している.また,fibroblastsに対する機械的刺激を加えることによりコラーゲンI・III型のmRNAが発現することは証明済みであるが,実際のコラーゲン産生能を定量的に行う実験は現在進行中である.臨床応用:消化管吻合手術後第二病日から「経口補水電解質液」を摂取すると,消化管蠕動運動が従来の絶飲食療法に比べ早期に復調し,さらに全身状態の回復も加速化されることを臨床において実証し,第63回日本消化器外科学会総会ワークショップにおいて発表した.今後,基礎実験と連携して,最適化された「経口補水電解質液」の開発を目指す予定である.
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