研究概要 |
本研究の目的は、1)アディポネクチンKOマウスの敗血症モデルを用いて、PPARγリガンドの敗血症に対する効果におけるアディポネクチンの直接作用の関与について検討し、2)敗血症患者において、ドレナージ手術やエンドトキシン除去カラムを用いた急速なエンドトキシン血症に対する治療を施した際の、血中アディポネクチン値の変化を検討し、エンドトキシン中和作用の点から、敗血症に対する新たな診断・治療戦略を展開することであった。 本研究により、アディポネクチンKOマウスを用いたマウスCLP敗血症モデルを用いて、KOマウスはWTに比べ敗血症による生存率が有意に低下することを確認し、WTマウスにおけるPPAR-γアゴニスト投与が有意に生存率を改善させることを示した(Uji et al.Surgery,2009/Uji et al.J Surg Res,2009)。このように、動物実験においてはアディポネクチンの敗血症おける役割とその測定意義が明らかになってきたが、この結果を受けて、当初当院における敗血症患者を対象とした臨床研究で十分な症例数を見込んでいたが、統計解析できる敗血症患者の症例数が十分には集まらなかった。そこで我々は腹部外科周術期に対象を広げ、血中アディポネクチンの測定・解析をしたところ、術前後に有意に低下し、術前後の低下の割合が大きいほど術後感染症が増えることを見出した(山本ほか肥満研究,2008)。そして、手術侵襲の程度を揃えるために集めた150名の胃癌周術期患者のサブグループ解析(ROC解析)では、術前後アディポネクチン比(ADN ratio=術後ADN値/術前ADN値)は、出血量やCRP(術後1日目)よりも術後感染予測の検出率が高く、臨床的測定意義が極めて大きいことを証明した(論文投稿中)さらに、さらに、本研究に関連する"侵襲管理方法およびアディポネクチンの利用"に関するヨーロッパ(EU)・アメリカ合衆国・中国を含む国々での特許を申請・審査中である。
|