研究概要 |
研究の目的 乳癌に対する化学療法剤,タキサン系薬剤の効果予測因子を確立し,効率的ながん個別化治療を推し進める.特にMicrotubule-associated proteins-tau(MAPT)とタキサン系薬剤の感受性の相関について検討を行う. 研究の成果 平成20年度は主に乳癌細胞株を用いてin vitroでの検討を実施した. 乳癌細胞株12株においてReal time PCR, western blottingによりmRNA, protein levelでMAPTの発現状況を調べ,タキサン系薬剤を含む4種抗(Docetaxel, Paclitaxel, Vinorelbin, Adriacin)への感受性とMAPT発現との関連性について検討した.mRNAでMAPT高発現を示した6株中4株が,proteinでは4株すべてがタキサン系薬剤においてIC50値10μM以上と耐性を示した.Vinorelbin, Adriacinではこの傾向は認めなかった.MAPT高発現2株でsiRNAによるMAPTのknock downを行い薬剤感受性の変化を検討,両細胞株でタキサン系薬剤のIC50値が数十分の一にまで低下,薬剤感受性の増加が確認できた.以上から,MAPT発現はタキサン系薬剤耐性に強く関与していることが示された. 次に,estrogen receptor(ER)とMAPT発現の関連性について検討した.MAPT, ERの同時発現株でsiRNA,ICI182,780によるER knock down,17βestradiol刺激を行いwestern blottingによりprotein levelでの発現状況の変化を調べた.ER knock downでMAPT proteinの減少,17βestradiol刺激で増加を認め,ERはMAPT発現に強い影響を与えていることが示唆された.以上の実験結果を踏まえ,タキサン系薬剤と内分泌療法を併用することでタキサン耐性を解除できると仮説を立てた.MAPT, ERの同時発現株でTamoxifen, ICI182,780とタキサン系薬剤でのcombination assaysを行った.Tamoxifenではantagonistic effectを認めたが,ICI182,780では強いsynergistic effectを認めた.また,Tamoxifen投与ではMAPT proteinが増加することも確認された.今後はin vivoにおいてタキサン系薬剤と内分泌療法の併用による治療効果についての検証をすすめる予定である. 研究成果の報告 本研究成果は平成21年度に開催される乳癌国際会議にて報告予定である.また,研究成果は論文化中であり,近く英文雑誌へ投稿し,研究成果の公表を行う.
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