研究概要 |
【目的】乳癌に対する化学療法剤,タキサン系薬剤の効果予測因子を確立し,効率的ながん個別化治療を推し進める. 特にMicrotubule-associated proteins-tau (MAPT)とタキサン系薬剤の感受性の相関について検討を行う. 【方法】乳癌細胞株12株を用いて, MAPTの発現解析(mRNA,タンパク)を行い,タキサン系化学療法剤およびその他の化学療法剤の感受性との関連を検討,また, ERシグナルのmodification (siRNAによるER発現の強制抑性,各種ホルモン療法剤によるERシグナルの阻害)を行い, MAPT発現の変化,タキサン系薬剤の感受性変化を検討. 【結果】乳癌細胞株において, MAPTのmRNAの発現とタンパク発現には乖離が見られた. mRNAの発現とタキサン系薬剤の感受性には,有意な相関関係はない,しかしウェスタンブロットにより同定した, MAPTの70KDa以下のisofomの発現は,タキサン系薬剤の感受性を規定する有意な因子であった. siRNAによるER knock downにより, MAPT isoform発現は低下し,同時にタキサン系薬剤の感受性の増加した.ホルモン療法剤の影響に関しtamoxifenはそのER刺激作用により, MAPTタンパクの発現上昇作用を認め,タキサン系薬剤とは拮抗作用を示した。一方, pure-anti estrogen agentであるICI182780はMAPT isoformの発現を低下させ,タキサン系薬剤との併用により相乗効果を示した. 【結論】乳癌細胞株において,タキサン系薬剤の感受性には70KDa以下のMAPT isoformが強い影響を及ぼす. ER陽性乳癌においてMAPTの発現はERシグナルの影響を受け, ICI182780はERシグナルの遮断により,タキサン系薬剤の感受性を増加させる.
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