研究概要 |
【背景】Estrogen Receptor (ER)陽性乳癌は,ER陰性乳癌に比べ一般に予後良好であるが,化学療法への感受性が限定的であることが知られている.平成21年までの研究で,我々はタキサン感受性予測因子である.Microtubule-associated proteins-tau (MAPT)はERシグナルにより制御されており,pure-antiestrogen agentであるfulvestrantはMAPT isoformの発現を低下させ,タキサン系薬剤との併用により相乗効果を示すことを明らかにした。我々は,この事象を確認するため,様々な化学療法剤とfulvestrantの併用効果をin vitroならびにin vivoで検証した. 【方法】ホルモン受容体陽性乳癌細胞株2種(MCF-7,ZR75-1)に対し,化学療法剤(ドキソルビシン,タキソール,タキソテール,ナベルビン,5-FU)と内分泌療法剤(タモキシフェン,fulvestrant)の併用効果をin vitroで検討し,CalucuSyn softwareを用いてcombination indexを算出した.また,ヌードマウスの皮下腫瘍モデルを用いて,ドセタキセル,ドキソルビシンとfulvestrantとの併用効果をin vivoで検討した. 【結果】fulvestrantと5種類の化学療法剤は全て相乗効果を示した.一方,タモキシフェンは全ての化学療法剤と拮抗作用を示した.化学療法効果規定因子であるBcl2はfulvestrantにより減少し,タモキシフェンにより増加した.in vivoでは,fulvestrantとタキソテールの併用は,著明な相乗を示した. 【結論】fulvestrantとタモキシフェンでは,ERシグナルに及ぼす影響は異なっており,結果的に化学療法耐性因子の発現にも大きな差異をもたらすことが確認された.fulvestrantと化学療法との併用は相乗効果を示し,特にタキソテールとの併用は有望な治療法である可能性が示唆された.
|