研究概要 |
YB-1蛋白は核酸結合を通じて多機能性を有しているが、その分子機構を明らかにするため、YB-1に関連する蛋白を網羅的に解析し分子間相互ネットワーク構造を同定する。すでにYB-1に分子会合する分子種(PCNA, p53など)を多数同定、報告している。YB-1と他の蛋白の蛋白質間相互作用による詳細な分子機構の解明をすることで、癌におけるYB-1の生物学的機能が明らかになり、消化器癌での診断、進展、マーカーとしての有効性を証明することができると考えている。これら細胞レベル、個体レベルでの解析により、癌におけるYB-1の生物学的機能や生態防御に果たす分子基盤を解明することができれば、新たな診断マーカーに有用であることを証明し新たな分子標的の可能性を明らかにする。 YB-1の消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌)での発現や細胞内局在を臨床検体を用いて解析した。消化器癌におけるYB-1の核内発現の意義を明らかにすることを目的に、食道癌、胃癌、大腸癌臨床検体のホルマリン固定パラフィン包埋薄切切片を用いた免疫化学組織染色にてYB-1蛋白の細胞内局在を同定した。YB-1の核移行率は、食道癌(n=30)、胃癌(n=10)、大腸癌(n=5)で各々、43%,50%,40%であった。今後、各癌腫別の抗癌剤治療前後の核移行について検討を重ねる。 消化器癌(食道癌、胃癌、大腸癌)におけるYB-1の発現、細胞内局在と浸潤・転移や抗癌剤感受性との関連を調べる予定である。抗癌剤治療に対する感受性や抵抗性のメカニズムの一端が明らかになり、治療効果の予測や治療戦略の構築への展開が期待される。
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