研究課題/領域番号 |
20591549
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
徳永 えり子 九州大学, 大学病院, 学術研究員 (50325453)
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研究分担者 |
塩谷 聡子 九州大学, 大学病院, 医員 (90419549)
沖 英次 九州大学, 医学研究院, 非常勤講師 (70380392)
定永 倫明 九州大学, 医学研究院, 非常勤講師 (20304826)
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キーワード | triple negative乳癌 / triple negative(TN)乳癌 / BRCA1 / LOH / 染色体不安定性 / FANCF / サブタイプ / 治療標的 |
研究概要 |
乳癌におけるER、 PR、 HER2発現・遺伝子増幅は内分泌治療及び抗HER2療法の効果予測因子として治療法選択上重要なバイオマーカーである。しかし、ER陰性、PR陰性、HER2陰性のtriple negative(TN)乳癌に対しては有効な標的治療が確立されておらず、新たな治療標的同定のためにその分子機序の解明は重要である。TN乳癌は遺伝子発現プロファイルにより分類されたサブタイプのbasal-like乳癌に種々の特徴がほぼ一致しているが、basai-like乳癌の遺伝子発現プロファイルはBRCA1変異による家族性乳癌と酷似することから、BRCA1経路の機能不全がbasal-like乳癌、TN乳癌の原因と考えられている。散発性乳癌においてはBRCA1変異頻度は極めて低く、他の機序によりBRCA1経路の機能不全を来すと考えられる。本研究ではTN乳癌の分子機序の解明を目的にBRCA1経路の機能不全の要因解明のため様々な解析を行った。(1)BRCA1LOHやBRCA1mRNA発現低下はER、PR陰性群で高頻度であったが、TN乳癌と明らかな関連は認められなかった。全症例を対象にした解析ではBRCA1LOH群の予後は有意に不良であった。興味深いことにTN群でもBRCA1LOH群は予後不良であり、BRCA1LOHはTN乳癌の新たな予後因子となることが示唆された。(2)BRCA/FA経路の中でFANCFのメチル化は乳癌においては極めて低頻度であることが明らかになった。(3)BRCA1機能不全は染色体不安定性の誘因となる。高頻度のLOHは染色体不安定性の指標になるため、高精度マイクロサテライト解析系を用いて、複数の領域でLOHの有無を解析した。その結果、TN乳癌ではほかのサブタイプよりLOHの頻度が有意に高く、悪性度と関連していることが明らかになった。今後TN乳癌の生物学的特性をさらに解明し、新たな治療標的を探索する予定である。
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