研究概要 |
自家遊離真皮脂肪片移法に関して,臨床的に整容性・耐久性を明らかにし,また動物モデルを用いて同移植の実験モデルを作成することが本研究の目的である. (1) 動物実験モデルとしてラットモデルを作成した.下腹部または側腹部より真皮脂肪片を採取する.同側の体幹皮筋または胸筋に移植し,移植後1週目から8週目までの経時的観察を行った.ラット一匹につき左右二箇所の移植を同時に行うことで,ラット一匹あたり観察に値する2移植片のサンプルを得ることが可能であった。移植片のボリュームは8週目までは変化をきたしていないことより,12週ないし16週までの観察が必要と思われた. 得られたサンプルの脂肪染色を行うことにより,脂肪細胞内腔に脂肪滴が貯留されていることを確認できることがわかった.臨床的に移植片のボリュームが何によって保たれているかは摘出しない限り,画像所見より類推したものに限られてしまうが,本動物モデルより得られた像から,器官として維持されている脂肪組織であることが明らかになった. (2) 臨床研究として,乳癌治療時に生じたA領域欠損部に下腹部より採取した遊離真皮脂肪片を乳腺欠損部に移植した.癌の根治性・術後の残存乳腺への照射適応,術後補助化学内分泌療法の適応は従来どおりとし,手術時間・出血時間・切除乳腺重量(体積)・移植真皮脂肪片重量(体積)と術後早期の整容性についての評価を行い従来の方法と比較検討を行った結果,遊離真皮脂肪片移植法は手技的に簡便で安全に行え,整容性に優れることがわかった.現在論文を作成し投稿中である.本年度に臨床応用を行った症例では,早期の合併症は認められなかった.1例に術後照射療法を追加したため,移植片のボリューム・画像所見等を綿密に経過観察することが可能であったため,現在追跡調査中である.
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