研究概要 |
自家遊離真皮脂肪片移法に関して,臨床的に整容性・耐久性を明らかにし,また動物モデルを用いて同移植の実験モデルを作成することが本研究の目的である。 (1)動物実験モデルとしてラットモデルを作成した.下腹部または側腹部より真皮脂肪片を採取する.同側の体幹皮筋または胸筋に移植し,移植後1週目から8週目までの経時的観察を行った.ラットー匹につき左右二箇所の移植を同時に行うことで,ラットー匹あたり観察に値する2移植片のサンプルを得ることが可能であった32週までの長期観察例の作成が終了し,サンプルを得ることができた.組織学的研究により,脂肪細胞は長期にわたり保持されていること,脂肪滴(脂肪細胞)の大きさ・密度に経時的な変化がみられる傾向が示唆された.今後,同サンプルの免疫組織学的検査を加えることにより遊離真皮脂肪片の生着機序にかかわる蛋白・分子等を明らかにしていく予定である. (2)臨床研究として,乳癌治療時に移植した遊離真皮脂肪片の経時観察をCTおよび針生検サンプルを用いて行った.移植時の遊離真皮脂肪片サイズを100として,術後6ヵ月,1年目,以降1年ごとに術後5年間の観察を行った結果,厚さ・幅ともに緩やかに縮小していくもののスペーサーとしての役割は保持される,術後4年以上経過しても針生検サンプルでは50%以上が脂肪組織であった,等の良好な臨床結果を得ることができた.現在論文を作成し投稿中である.本年度には新たに,ドナー部位を下腹部より側腹部へと改良を加えた術式を導入した.現法と同様に長期的な観察・評価が必要と思われ,現在追跡調査中である.
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