研究課題
リン脂質(乳化剤)として、われわれが長年研究を続けてきたphosphatidylglycerol (PG)で中鎖脂肪酸トリグリセリド(medium chain triglyceride、MCT)を50%含有した全く新しい静注用脂肪乳剤を作成し、TAA誘発硬変肝切除モデルに対し120分間これら3種の脂肪乳剤を持続投与すると、新組成PG乳化MCT/LCT脂肪乳剤の血清中性脂肪は他の2剤に比べて有意に低値を示した。特に他の2剤は投与終了120分後でも血清中性脂肪は高値を呈したのに対し、新組成PG乳化MCT/LCT脂肪乳剤は正常肝に投与した時と同じレベルまで低下した。同時に、血清游離脂肪酸の上昇も有意に抑制されていた。肝障害時に脂肪乳剤を投与すると、乳化剤としてしたリン脂質の血中濃度が上昇するが、新組成PG乳化MCT/LCT脂肪乳剤は硬変肝切除モデルでも血清リン脂質は全く上昇しなかった。同時に測定した血清HDLが新組成脂肪乳剤投与後より低値を呈したことから、新しい乳剤は肝硬変肝切除後でも血中で速やかにアポ蛋白を受け取り、肝臓に取り込まれ代謝されることが椎察できた。実際に肝に取り込まれた中性脂肪が有効に利用されているか、電子顕微鏡による肝の形態学的観察を行ったところ、肝細胞内に取り込まれた脂肪粒子はその代謝終末像とされるラメラ体および液胞となり、肝細胞内で十分代謝されることが判明した。今後は肝組織内ATP量を測定し,投与した脂肪乳剤が実際にエネルギー源として利用されたかどうかを検討する予定である。