研究課題
基盤研究(C)
CEACAM1は上皮細胞や血球性細胞、血管内皮細胞に発現するI型膜貫通型糖蛋白であり、Immunogloblin superfamilyやCEA familyに属する。これまで、CEACAM1は大腸癌では発現が低下するという報告と発現が増強するという相反する報告がされてきた。本研究において、癌表層部では発現が低下しており、進行がんの浸潤先進部では発現が増強するということを明らかにし、この矛盾点を解決した。また、大腸癌においてはCEACAM1の発現強度は悪性度と関連しないという点においても、本研究において、発現強度よりもisoform balanceが悪性度と関連することを明らかにした。基礎的研究からCEACAM1-L isoformの強い大腸癌は、転移・浸潤に関連することを確認した。CEACAM1 isoform balanceをコントロールすることにより大腸癌の浸潤、転移を抑制できる可能性を明らかにした。さらに、CEACAM1によりlumen formationが誘導されることが乳癌細胞で報告されていることから、大腸癌の浸潤先進部における管腔形成とCEACAM1の発現およびisoform balanceについて検討したところ、管腔を伴う癌細胞巣はCEACAM1 long cytoplasmic domain isoformを発現していることを確認した。さらに臨床病理学的に統計解析し、管腔を伴う癌細胞巣が転移や予後について有意に相関し、かつBuddingよりも優れた指標であることを証明した。また、大腸癌培養細胞を用いてCEACAM1のisoformを含めた発現変化を行い、CEACAM1はlumen formationの調節因子であり、CEACAM1-Longの強発現と経時的なlumen formationとの相関について明らかにした。本研究において、大腸癌浸潤先進部の管腔を伴う癌細胞巣は転移および予後不良の独立した因子であることが明らかになったことで、大腸癌における管腔を伴う癌細胞巣形成は腫瘍形成能を示している可能性がある。今後、さらなる大腸癌先進部の管腔を伴う癌細胞巣の意義について検討する必要がある。
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Int J Cancer. (Epub ahead of print)
ページ: doi:10.1002/ijc.26072
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/2nd-surgery/