研究課題/領域番号 |
20591559
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
權 雅憲 関西医科大学, 医学部, 教授 (70225605)
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研究分担者 |
北出 浩章 関西医科大学, 医学部, 講師 (20298855)
横井川 規巨 関西医科大学, 医学部, 助教 (40460836)
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キーワード | ファイブロネクチン / 多剤耐性緑膿菌 / 感染防御 / 熱傷マウス |
研究概要 |
緑膿菌は免疫不全患者や術後患者などにおいては、肺炎や敗血症などの急性感染症を引き起こしやすく、一旦発症すると重症化しやすい。さらに、緑膿菌は抗菌薬に対して耐性を獲得しやす多剤耐性株に対する有用な抗菌薬は存在しない。フイブロネクチン(Fn)は、食細胞による緑膿菌の貧食において重要なオプソニンであり、食細胞は補体C3およびFnレセプターを介して緑膿菌を貧食し、殺菌するとされている。そこで、マウスの熱傷モデルでの多剤耐性緑膿菌感染に対するフィブロネクチンの生体保護効果を検討した。 ネンブタール麻酔下でDDY雄性マウスの背部の毛を全体表面積の約30%を剃毛し、沸騰水で5秒間さらして熱傷作成後、10^2-10^<10>cfu/mlの多剤耐性緑膿菌(U-31)浮遊液0.2mlを熱傷部位の皮下に接種した。熱傷作成前にFnを30-300mg/kg(i.v.)投与し、Control群には同量のヒト血清アルブミンを投与した。Control群の生存率は10%であったが、Fn投与群では80%と有意に良好であった。熱傷後のラットの血漿Fn濃度は低下し、4時間後に最低値となった。熱傷後のラットにFnを投与すると血漿Fn濃度は1時間でピークとなり、6時間高濃度を持続した。また、通常マウスの肝臓内の多剤耐性緑膿菌数は、Fn投与群ではControl群よりも有意に減少していたが、血中の細菌数には差がなかった。熱傷マウスでは、Fn投与により血中及び肝臓内の多剤耐性緑膿菌数が有意に減少した。さらに、血漿Fn投与は多剤耐性緑膿菌に対する食細胞貪食能を用量依存性に促進し、1000・g/ml投与では90%の多剤耐性緑膿菌が貪食されたが、アルブミン投与では食細胞貪食促進効果は認められなかった。 マウス熱傷モデルにおける血漿Fn投与は、耐性の出現を伴わない多剤耐性緑膿菌感染の治療法として有用であると考えられた。
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