研究概要 |
緑膿菌は弱毒菌であり、健常人に対して感染症を惹起する事は稀である。しかし、免疫不全患者や術後患者などにおいては、肺炎や敗血症などの急性感染症を引き起こしやすく、一旦発症すると重症化しやすい。さらに、緑膿菌は抗菌薬に対して耐性を獲得しやすく,メタロβ-ラクタマーゼ産生緑膿菌で、アミノ配糖体やフルオロキノロンにも耐性を示す多剤耐性株に対する有用な抗菌薬は存在しない。そこで、担癌モデルや免疫低下モデルでの多剤耐性緑膿菌感染に対するフィブロネクチン(Fn)の防御作用を検討した。 1)担癌末期の多剤耐性緑膿菌感染に対するFnの生体保護作用の検討 Ehrlich腹水癌細胞を接種した18日目の担癌マウスに多剤耐性緑膿菌(U-31)を1.3×10^4~10^5個を皮下に接種し、Fnまたはヒト血清アルブミンを100mg/kgを静脈投与すると、有意な救命効果は認めなかったが、Fn投与群では有意な細網内皮系機能の回復をみとめた。 2)免疫低下マウスの多剤耐性緑膿菌感染に対するFnの防御作用の検討 8週齢のBALB/c雌性マウスにCyclophosphamideを4mg/0.2ml/mouse(200mg/kg)となるように調製し、腹腔内に投与した。4日後に10^2-10^<10>cfu/mlに調整した多剤耐性緑膿菌(U-31)の0.5mlをマウスの腹腔内に接種した。多剤耐性緑膿菌の接種前後にフィブロネクチンを30-300mg/kg(i.v.)し、Control群には同量のヒト血清アルブミンを投与した。Control群の生存率は0%であったが、Fn投与群では60%と有意に良好であった。また、Fn投与により血中及び肝臓内の多剤耐性緑膿菌数が有意に減少した。補体存在下でFnを添加した群では、菌数は経時的に減少し,120分後には50%になった。 Fnは免疫機能低下時の多剤耐性緑膿菌感染に対する感染制御に有用であると考えられた。
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