薬剤の吸収を緩徐にさせることを意図した基剤の追加として、生体内で安全であることが証明されている高分子量物質であるものを探求した結果、非動物由来で、分子同士を架橋構造によって安定化させたピアルロン酸、Nor-Animal Stabilized Hyarulonic Acid (NASHA) (Q-med社、スウェーデン)を選択し、これと腹腔内化学療法に適しているとされているタキサン系抗癌剤であるパクリタキセルを混合することによる腹腔内停留性、抗癌作用の増強効果を検討した。ヌードマウスでの胃癌腹膜播種モデルに対する腹腔内化学療法を行い、播種結節数を計測すると、対照群であるPBS群と、レモフォール+5%NASHA群では形成された腹膜播種結節数に有意差はなかったが、パクリタキセル単独治療群でも対照群に比較し有意な結節数の減少を認めた。しかし、パクリタキセルに5%NASHAを混合した群では、パクリタキセル単独治療群と比較してさらに顕著な結節数の減少が認められた。腹腔投与後に回収された液体残量の経時的変化を、図3に示した。180分後にはPBS単独で投与された群では、投与された液体はほとんど回収ができないのに対し、5%MS温混和群でに投与量の約半量が回収できた。さらに360分後においても、腹腔内での液体貯留がみられ、計測上も有意差をもって高値であった。5%NASHA混和群において回収された液体を3000rpmで5分間遠心を行うと、NASHAが沈殿するのが見られたが、この沈殿量は180分後までほとんど変化が無かった。以上より、NASHAは、腹腔内に投与されたパクリタキセルの腹腔内に停留する時間を延長し腹膜播種に対する有用性を高める事が推測された。
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