徐放薬剤の腹腔内投与が播種性病変に対して有用かどうかを検討する目的で、非動物由来ヒアルロン酸、Non-Animal stabilized Hyarulonic Acid (NASHA) (Q-med社、スウェーデン)とタキサン系抗癌剤であるパクリタキセルを混合した薬剤を作成、腹腔内投与後に、腹腔内での停留性、抗癌作用の増強効果を検討した。ヌードマウスでの胃癌腹膜播種モデルにて、パクリタキセル単独治療群に対し、パクリタキセルに5%NASHAを混合した群では、パクリタキセル単独治療群と比較して有意に顕著な結節数の減少が認められた。5%NASHAの混合は、腹腔内での液体貯留を延長し、播種巣内でのパクリタキセル濃度を高めた。蛍光標識パクリタキセルを使用すると、5%NASHAの存在により、播種巣内のより深部までパクリタキセルが浸透することも確認できた。以上の結果より、NASHAは、腹腔内に投与されたパクリタキセルの腹腔内に停留する時間を延長するだけでなく、腹膜播種巣内への浸透性を高めることによって、播種に対する抗腫瘍効果を高めている事が推測された。NASHA+パクリタキセルの腹腔内投与は胃癌腹膜播種に対する新たな治療戦略として有用であることが証明された。
|