研究概要 |
有効な癌ワクチン療法の開発のために、(1)複数の癌拒絶抗原の必要性、(2)高度免疫抑制状態ではない術後の再発防止に効果が期待される、(3)Cancer-Testis(CT)抗原などの癌特異的抗原に対する強力な免疫誘導の必要性、の3点を重点項目としている。そのため、扁平上皮がんに特異的に発現し、免疫原性を有するURLC10,KOC-1,TTKの3種類の新規癌拒絶抗原を同定し、平成20年度は、上記3抗原を用い、標準療法不応の食道扁平上皮がんを対象として癌ワクチン療法(第I相試験)を実施し、安全性、治療遂行性に問題はなく、接種部位の発赤と硬結が認められるのみであった。10例中9例において、少なくとも3抗原のいずれかに免疫誘導がELISPOT検査で確認され、用いた3抗原の免疫原性が証明された。さらに、10例中2例において画像診断上、腫瘍の縮小が認められた。以上の良好な第I相試験の結果から、平成21年度には臨床効果を検討することを目的とした第II相試験を立案、実施中である。多施設共同、無作為化比較臨床試験をデザインし、予定症例数60例で、全生存率(Overall survival)を主目的として、免疫学的検証、臨床効果を副次目的とした。2010年3月現在、58症例がエントリーされ、臨床試験は順調に経過中である。中間解析の段階では、重篤な副作用の報告はなく、全症例の平均生存率は過去の報告に比較して遜色はなく、臨床試験の継続に問題ないと判断できる。平成22年度中にはすべての予後が判明する予定であり、今後、第II相試験の結果を解析する予定である。
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