L1がgliomaの幹細胞マーカーであることが報告されたことから、本研究機関の大部分について、幹細胞マーカーをL1にしぼってさらに研究を進めた。昨年度に胃癌切除標本におけるL1発現が有意な予後不良因子であることを突き止めたが、この要因をさぐるため、in vitroで分子生物学的解析を行った。L1強発現胃癌細胞株KATOIIIでsiRNA法によりその発現を抑制した。親株とL1抑制株における細胞の増殖能を比較した結果、L1抑制株で有意に抑えられていた。また、細胞遊走の変化をmigration assayで観察した結果、これもL1抑制株で有意に抑制されていた。親株とL1抑制株の間の遺伝子発現の変化についてマイクロアレイにより網羅的に解析し、約40000遺伝子のうち50遺伝子がL1抑制株で4倍以上に強発現し、20遺伝子が1/4以下に抑制されていることをつきとめた。さらに、過去の報告(Steve Silletti et al.JBC.2004)で、L1発現による細胞の増殖はp-ERKを介して起こること、p-ERK発現下においてL1を遺伝子導入するとCD44の発現が強まると報告され、L1と胃癌幹細胞マーカーの一つとされつつあるCD44の関連が示唆されたので、これについても検討することとした。KATOIII親株、L1抑制株でFACS解析によりCD44の発現を調査したが、現状では、親株、L1抑制株ともにCD44発現は見らていない。これについては、他の細胞株を用いて再検討を予定している。なお、計画されていた外科切除標本からのside populationの分離も試みを継続している。
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