研究概要 |
本課題の目的は、食道癌におけるエピジェネティクスにより調節を受けるマイクロRNA(miR)の探索にある。課題の初年度として、まず、miRの検出系であるmiRマイクロアレイのデータの再現性と、miRプロファイリングを行った。(1)miRマイクロアレイの信頼性の検証:市場で入手可能な5種類のmiRマイクロアレイについて調査したところ、アジレント社と東レ社の製品はプラットフォーム内再現性が高く、プラットフォーム間データの一致性が高かった。また、定量的PCR法によるmiR定量データとの相関も高く、データの信頼性が高いと考えられ、今後のプロジェクトに東レ製miRマイクロアレイを使用することになった。(Sato F, et al. PLoS One, 2009, in press)(2)食道癌関連miRの探索:食道腺癌に関連するmiRの解析を、食道正常上皮細胞、バレット上皮細胞、食道腺癌細胞株と、臨床生検標本を用い施行した。食道腺癌に於いてmiR25-93-106bクラスターの発現が亢進しており、その原因の一つとしてそのクラスターの染色体上のLocus(MCM7遺伝子領域)の増幅が関係していた。miR25-93-106bクラスターの抑制オリゴの導入は、食道癌細胞株(OE33)の増殖をin vitro,in vivoともに抑制した。また、miR93-106bは、p21,Bimを標的としている事がルシフェラーゼアッセイを用いて明らかになった。(Kan T, Sato F,et al.Gastroenterology,2009,in press.)(3)食道癌のエピジェネティクス解析:食道癌のゲノムワイドのエピジェネティクス情報は、高速シーケンサーを用いたMeDIP法を用いて取得する計画である。現在その検出系の確立を急いでいる。
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