本課題の目的は、食道癌におけるエピジェネティクスにより調節を受けるマイクロRNA(miR)の探索にある。 (1)研究計画書ではDNAチップによるDNAメチル化解析を計画していたが、高速シーケンサーが使用可能となり、Methylated CpG Island Recovery Assay (MIRA)法と高速シーケンサーによる網羅的DNAメチル化解析法の確立を行った。MIRA法はメチル化DNA結合蛋白(MBD2)を用いたメチル化DNA断片濃縮法であるが、Invitrogen社キットを使用した。第4分画以降がDNAのメチル化割合が大きい事がBisulfite Sequencingで判明した。食道癌細胞18株と正常食道上皮細胞5株について、この方法でRAWデータ取得を行った。 (2)細胞株で得られた知見は臨床標本を用いて検証しなければならない。そこで、食道扁平上皮癌86症例の正常上皮と腫瘍部のmicroRNA発現プロファイルを取得した。また、その対象症例の臨床病理学的情報もデータベース化した。 (3)第1年度に取得した食道癌細胞株のmicroRNA発現情報と(1)で得られたDNAメチル化情報、更には(2)で得られた臨床標本でのmicroRNA発現情報を相関させ、詳細なBioinformaticsによる解析を施行中である。これによって、食道癌におけるエピジェネティクス制御を受けているmicroRNAを見出すことが可能になる。 今後、(3)でスクリーニングされたmicroRNAについて、機能解析を行う予定である。本研究で得られた知見は、早期診断のバイオマーカー創出や、microRNA治療やエピジェネティクス治療等の新たな治療法の確立に有用と考えられる。
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