研究概要 |
【研究の目的】食道癌は治療に難渋し、予後も極めて悪い。根治手術後も多くが再発し、化学療法をせざるを得なくなる。また、気管、肺、大動脈へ浸潤した進行食道癌は、放射線化学療法(Chemo-raditherapy CRT)が第一選択となるが、その効果は満足するレベルではない。さらに、CRTは食道炎や肺臓炎などを誘発し、死に至る有害な副作用がある。進行、再発食道癌において、CRTの感度増強と副作用軽減は急務である。NFκB siRNAを食道癌局所に注入すると、癌細胞はNFκBを産生できなくなり、アポトーシスに陥り、放射線や化学療法の感受性が高まると期待される。NFκB siRNAとCRTの併用により、安全で腫瘍の縮小効果を最大限に引き出せるシステムの開発が研究の目的である。 【研究の成果】食道癌症例におけるCRTの現状を調査した。対象は、平成6年1月〜平成18年4月までに当科で放射線化学療法を施行した食道癌患者53名で、Stage O,I(n=6),II(n=6),III(n=16),IVa(n=18),IVb(n=7)であった。放射線は40~60Gy照射され、化学療法は5FU+Nedaplatinか5-FU+Docetaxelを使用した。53例のCRTの評価は、CR:19,PR;17,NC:9,PD=8で、response rateは67.9%であった。Response rateは、Stage I:100%,II:83.3%,III=81.3%,IVa=61.1%,IVb:14.3%と、進行するにつれてCRTの効果は減少した。5年生存率は、CR:100%,PR:40%であったが、NC,PD症例は全例1年半で死亡した。CRTに関連した死亡例は7例(13.2%)に認めた(放射線性肺臓炎:1,食道気管支瘻:2、食道大動脈瘻;2、胸水、心嚢水貯留:1、縦隔膿瘍:1)。次年度は、食道癌においてNFκBタンパク発現の程度を免疫組織学的に検討し、ヌードマウスへの食道癌細胞の移植と、NFκB siRNAと制癌剤の効果を検討する。
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