炎症が発癌や癌の進展に強く関与していることはよく知られている。インターロイキン17(IL-17)は炎症性サイトカインであり生体内でおこる種々の炎症に関与しているが、ごく最近、ヘルパーTリンパ球にIL-17を特異的に産生する細胞(TH-17)が存在することが報告され注目されている。しかしながら癌におけるTH-17細胞の役割に関しては何も解明されていない。そこで、癌のなかでも本邦で非常に多い消化器癌(特に胃癌)において、TH-17細胞の癌進展に及ぼす影響を明らかにすることを目的として検討を行った。まず、胃癌手術症例を対象に術前の末梢血や手術によって摘出された癌組織、非癌部組織においてTH-17細胞の頻度をFACSにて測定した。TH-17細胞の同定は細胞内染色を行い、CD3+CD4+IL-17+細胞をTH-17細胞として解析した。その結果、末梢血では健常成人と胃癌患者との間にTH-17細胞の頻度の差は認められなかった。一方で腫瘍組織にはTH-17細胞が末梢血や非癌部に比べて有意に高頻度に認められた。さらに同じサンプルを用いてIFN-γおよびIL-4の細胞内染色を行い、TH-1細胞およびTH-2細胞の頻度を解析しTH-1/TH-2/TH-17のバランスが担癌患者でどのように変化しているかを比較・検討したところ、癌組織においてはTH-1細胞やTH-2細胞と比較してTH-17細胞の明らかな上昇が認められた。これらの結果から癌局所においてTH-17細胞が癌の進展に大きく関与している可能性が推察された。今後は、TH-17細胞が消化器癌の進展にどのように関与しているかを詳細に検討していく予定である。
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