【研究の目的】 スキルス胃癌は腹膜転移やリンパ節転移を伴うことが多く手術不能例が多いが、抗癌剤の有効性も低いため予後不良である。我々は、FGF-7やTGFβが、スキルス胃癌細胞のFGF-R2やTGFβreceptorに作用し癌細胞の浸潤・転移能を亢進していることを明らかにし、その阻害剤がスキルス胃癌治療に有用で、さらに抗がん剤との併用効果を認めた。そこで、FGF-R2阻害剤Ki23057やTGFβシグナル阻害剤のスキルス胃癌の抗癌剤との併用効果の機序を明らかにすることを目的とした。 【材料と方法】1. In vitroの検討として、アポトーシス関連因子に及ぼす影響を検討する。2. 腹膜播種性転移に対する影響(in vivo) : 4週齢雌のBALB/c nu/nuマウスを用い、胃癌腹膜播種性転移マウスを作製後、Ki23057あるいは抗癌剤S1を経口投与し、腹水の程度や生存率を検討する。3. リンパ節転移に対する影響(in vivo) : 4週齢雌のBALB/c nu/nuマウスを用い、胃癌リンパ節転移マウスを作製後、一週間目よりKi23057あるいは抗癌剤S1を経口投与し、腫瘍径、転移リンパ節数、を測定する。 【結果】(1). Ki23057と5FUの併用により相乗効果を認め、早期アポトーシス細胞が有意に増加した。また、Ki23057と5FUの併用により5FUの代謝酵素のDPDが抑制されP21発現が亢進した。(2). FGFR2阻害剤あるいはTβR阻害剤と抗癌剤S1併用により胃腫瘍径およびリンパ節転移が有意に抑制された。 【結論】FGFR2阻害剤およびTβR阻害剤はスキルス胃癌の新規分子標的治療法として有用で、さらに抗癌剤との併用により相乗効果を有することが示唆された。
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