研究概要 |
食道癌細胞株におけるendogenousなNPRL2・Rad51発現量と放射線感受性の相関関係:ヒト食道癌細胞株10株で、放射線に対するIC50はそれぞれ1.58Gyから9.28Gyの範囲であった。一方、それぞれの腫瘍株のNPRL2蛋白は一律にほとんど発現を認めず、Rad51蛋白発現レベルは、全ての腫瘍株で強発現を認めた。以上よりNPRL2あるいはRad51発現量と放射線感受性に相関関係は認めなかった。 NPRL2ベクター・Rad51-siRNAベクターの効果:ヒト食道癌細胞株(TE1,TE3)に対するNPRL2ベクターの腫瘍増殖抑制効果は約30%であった。IC20の放射線治療を併用し相乗効果を検討した所、抑制効果は60%前後まで増強された。また、Rad51に対するsiRNA配列を設定し、siRNA発現ベクターを作製したが、Western blotでRad51の発現抑制効果はほとんど認めなかった。 細胞周期停止・アポトーシス・DNA damage pathwayにおける放射線治療とNPRL2ベクターの併用効果の検討:1)control群、2)放射線療法(IC20)、3)NPRL2群、4)NPRL2+放射線療法の4群を設定した。細胞周期・アポトーシスはAPO-BRDU KIT(BD Biosciences Pharmingen)を用いたFACSにおいてNPRL2+放射線療法群は著明なG2停止とアポトーシスを認めた。また、この群における、有意なカスパーゼ活性化の上昇とCDK/cyclin複合体の形成増加を確認した。次に、Western blottingでDNA damage pathwayが活性化されると発現するP-ATM,γ-H2AX,P-Chk2,P-Chk1の発現量を検討した結果、NPRL2+放射線療法群は他群と比較して著明な増加を認めた。 本研究結果のまとめ:以上より、食道癌放射線治療の効果をNPRL2ベクターは細胞周期停止・アポトーシス増強・DNA damage pathwayの活性化を介して増強することが、本研究で証明された。
|