化学療法の進歩と共に、高度進行・再発胃癌に対して化学療法が奏功して手術可能となる症例が増加している。標準治療として用いられるS-1+CDDPは代謝拮抗剤と白金製剤という異なる分子(群)を標的とする薬剤であるが、分子レベルでの相乗効果判定などについては推測の域を出ていない。本申請では、術前化学療法が奏功して切除可能となった症例および化学療法なしに切除された症例を用いてその蛋白発現を比較し、化学療法後症例に特異的に発現している、あるいは発現していない蛋白を組織マイクロアレイ(TMA)・免疫組織化学染色(IHC)を用いて同定する。今年度は、1.サンプルおよび臨床的背景の収集とデータベース構築2.組織マイクロアレイの作成のためのトレーニング3.免疫組織染色のための抗体の選定を目標に掲げていた。抗体のパフォーマンスの確立の度合いを考慮し、構造・ハウスキーピング蛋白関連抗体、ストレス反応経路、細胞周期、アポトーシス関連蛋白を順次購入・テストを行った。現在までTMA作製においてはノウハウを蓄積し、安定した供給が可能となった。さらに、術前化学療法を施行された症例のパラフィンブロックの収集、臨床データの整理を終了し、TMA作製の段階に入っている。今後は免疫染色の条件決定をする予定である。
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