研究課題
H20-21年度の研究にて分子標的治療薬のTrastuzumab(Tr)、化学療法剤(Gemcitabine, S-1)及びプロテアソム阻害薬のBortezomibと活性化リンパ球との相乗的抗腫瘍効果を確認された。今年度は活性化リンパ球による細胞療法のほか、新たにペプチドワクチン療法も含めた免疫療法と既存の治療薬との相乗的作用の基礎的機序について研究を行った。まず、臨床有効例の患者末血リンパ球を用いて,自己癌細胞との2週間リンパ球腫瘍混合培養(MLTC)により自己活性化リンパ球を誘導し,in vitroで各種抗癌剤と様々の組み合わせで自己腫瘍細胞やtarget tumor cell lineに添加投与を行う.両者の相互作用についてリンパ球の性状や腫瘍細胞傷害性をFlow cytometryや^<51>Cr release assay等にて評価した。その結果、抗癌剤の抗腫瘍作用により腫瘍細胞のapoptosis, cross-presentationによって抗原提示細胞(APC)の抗原提示能の変化が向上し、免疫細胞の抗腫瘍効果が増強されたことを解明した。一方では、標準治療抵抗性の乳癌を中心に抗癌剤併用ペプチドワクチン療法の臨床試験を行い、ペプチド投与前及び6回、12回投与後の進行性乳癌患者のがん免疫機能を解析した。これまでに31例が登録され、いずれも重篤な有害事象は認めなかった。その中で1クール以上を終了し、評価可能な進行・再発転移症例20例の臨床効果はCR1/PR1/SD11/PD7例で、SD症例中腫瘍マーカーの減少例は2例であった。抗ペプチド特異抗体価は6回投与後に20例(CR:1,PR:1,SD:11/NE:1)において上昇を認め、7例(CR+SD:4/PD:3)では増加が見られず、12回投与後に9例中9例(CR+SD:6/PD:3)において抗体価上昇を認めた。従って、6回より12回長期投与した症例において抗体価の上昇が著明であった。標準治療が無効となった症例においても臨床的効果は認められたことから、ペプチドワクチンによるがん集学的治療としての意義が示唆された。次年度より、同研究も継続的に行う予定である。最終的に癌免疫療法(細胞療法、ワクチン療法)の基礎的、臨床的evidenceを確立し、第4の治療法として標準化を目指す。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (11件) 備考 (1件)
Cancer Biology, Therapy
巻: 10(12) ページ: 1266-1279
Mol Cancer Ther.
巻: 9(6) ページ: 1842-1851
Pathol Int.
巻: 60(1) ページ: 22-26
臨林と研究
巻: 87(7) ページ: 955-961
癌と化学療法
巻: 37(8) ページ: 1607-1609
http://research.kurume-u.ac.jp/