進行胃癌患者に対して、積極的に腹腔鏡検査を導入し正確に腹膜播種転移の有無を診断、治療前の進行度を確定するとともに、遺伝子検査目的で胃癌組織を生検採取し保存した。RNAを抽出し、胃癌における遺伝子発現を検査する予定である。S-1/CDDP併用による抗癌化学療法を2コース実施した後、胃切除術を実施した。化学療法の効果判定をCT、内視鏡検査、病理検査により実施した。術前化学療法により胃癌原発巣の縮小ばかりでなく、腹膜播種転移の消失を認める症例もあり、予後改善効果が期待される。同治療を実施した患者の中で、1例が極めて重篤な骨髄抑制を生じたため、本症例の臨床経過について論文報告した。上記患者胃癌検体で5-FU代謝関連酵素に関して調べたが、現在のところ有害事象を生じる危険性を示唆する因子については同定できていない。 一方、手術、放射線・抗癌化学療法に抵抗性となった進行・再発食道癌患者を対象として、がんワクチン療法第1相臨床試験を実施した。三重大学医学研究科・珠玖洋教授よりCHP-NY-ESO-1、CHP-HER2がんワクチンを供与いただき、アジュバントしてOK-432と混合した後、適応患者に各々皮下注射した。注射部位の軽度発赤を含む皮膚反応を認めたが、他に重篤な有害事象を認めず安全であることが示された。ワクチン療法治療効果判定をCT、内視鏡検査により実施した。各ワクチン投与前に患者より採血、リンパ球と血漿を分離、凍結保存した。抗原特異的免疫反応に関する検討を予定している。
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