1)対照群、2)BD群:総胆管を結紮・切離し、胆嚢と回盲部から50cmの回腸を吻合する、3)BPD群:主膵管と総胆管の開口部を含むように十二指腸を長さ約5cmで切離し、口側断端を縫合・閉鎖する。肛門側断端を回盲部から約50cmの回腸に端側吻合を行ない、残った十二指腸は端端吻合で再建、4)PJD群:BPD群の操作を行なった後に、総胆管を結紮・切離し、胆嚢と十二指腸を吻合する、5)SO群:BPD群の位置で十二指腸を切離、再吻合する、の5群をイヌを用いて設定した(各群5頭)。これら5群で空腹期上部消化管運動を測定したところ、BD、BPD群で、他の3群と比較しての空腸における空腹期強収縮の頻度と伝播速度の低下が認められた。また、食後期収縮については、空腸での食後器収縮の抑制、胃排出と相関する空腸の食後期運動の長さの延長が認められたことから、胃排出遅延の可能性が示された。また、ホルモンの結果として、食後のインスリン濃度には5群間で差を認めなかった。一方、食後のgastric inhibitory polypeptide (GIP)濃度はBPD、PJD群で有意に抑制、食後のpeptide YY (PYY)濃度はBD群で有意に上昇していた。BD群で認められた消化管運動抑制効果は、回腸から分泌され、消化管運動抑制効果を有することが知られているPYY濃度の上昇が関与している可能性が示された。また、GIP分泌には膵液の空腸内への流入が促進因子として重要と思われた。このような事実は、手術による糖尿病改善効果のメカニズムを考える上で極めて重要である。
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