大腸癌では肝転移を中心とした血行性転移の発生が高く、その対策が予後の向上に貢献することが考えられる。私どもはFerraraらが正常内分泌系細胞から血管新生増殖因子:EG-VEGF遺伝子について検討をおこなっている。これまでに当科においてヒト大腸癌切除症例に対してEG-VEGFmRNAの発現を検討し、大腸癌原発巣では約30%の症例で強発現していること、また臨床病理学的検討において血管新生、肝転移に関与することを報告している。基礎的研究ではEG-VEGF遺伝子ベクターを大腸癌細胞に導入により、細胞増殖率が有意に増加することを確認した。 また独自に抗EG-VEGF抗体を作製し、高EG-VEGF発現型大腸癌の細胞株とtube formation systemを使った検討において抗EG-VEGF抗体を暴露しないコントロール高EG-VEGF発現型大腸癌の細胞株ではtube formationの長さは750μmであったのに対して、抗EG-VEGF抗体を暴露した場合は400μmと有意にtube formationの抑制が認められた。 この血管新生増殖因子:EG-VEGFは大腸癌において血行性転移に関わる一つの因子として考えられ、この分子の発現をコントロールすることにより、腫瘍の血管新生・増殖を抑制し、ひいては予後の改善に貢献する可能性が考えられる。
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