研究課題/領域番号 |
20591589
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研究機関 | 財団法人癌研究会 |
研究代表者 |
長山 聡 財団法人癌研究会, 消化器外科, 医長 (70362499)
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研究分担者 |
坂井 義治 京都大学, 医学研究科, 教授 (60273455)
戸口田 淳也 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (40273502)
久保 肇 京都大学, 医学研究科, 講師 (50362520)
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キーワード | 大腸癌 / 浸潤 / WNT伝達系 / FZD10 |
研究概要 |
(1)FZD10に対する特異的抗体を作成し、大腸癌切除104例を対象に抗FZD10抗体を用いて免疫染色にてFZD10発現状況を検討した。また、このうち30例では並存する腺腫でも発現検討し、さらに別の17症例では切除された肝転移巣で発現検討を行った。 (1)正常大腸粘膜、正常肝組織での発現は認められず、腫瘍特異的にFZD10の発現が認められた。 (2)大腸腺腫と大腸癌が併存する30症例では、大腸腺腫での発現頻度(3.3±10.3%)に比較して大腸癌での発現頻度(20.5±31.7%)が有意に増加した(P=0.0016)。 (3)同一患者(17症例)における大腸癌の発現頻度(33.2±39.7%)は肝転移巣の発現頻度(26.4±33.4%)と有意差はなかった。また、原発巣と転移巣との発現頻度には正の相関が認められた(Pearson coefficient=0.90)。この結果は大腸癌発生にFZD10が関与している可能性を示唆しており、さらに原発巣と肝転移巣との発現状況が類似していることから、切除された原発巣のFZD10発現状況から治療対象となる肝転移巣の発現状況を予測することが可能と思われる。 (2)大腸癌切除標本を用いて、FZD10シグナル伝達系の主要な因子であるb-catenin蛋白とFZD10蛋白の発現状況の相関性を免疫染色にて検討した。 FZD10陽性およびFZD10陰性癌細胞でのb-cateninの発現強度ならびに核移行の状況を検討した結果、FZD10陽性大腸癌細胞ではb-cateninの核蓄積が有意に少なく、逆にFZD10陰性癌細胞でb-cateninの核蓄積が有意に増加していた。 この結果はFZD10がnon-canonical pathwayを介してシグナル伝達を行う、或いはcanonical pathwayに対して抑制的に作用する可能性を示唆している。 (3)FZD10遺伝子の転写調節領域を決定し、Luciferase assayにて転写に関するcore regionを同定した。複数の転写結合領域を含んでいるが、転写調節に関与しうる主要因子の同定にはまだ至っていない。
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