研究概要 |
本年は30症例の大腸Lateral Spreading Tulnor(LST)と20症例のPolypoid type tulnor(PT)に関して、aPKCおよびbeta-catenin, cadherin, Type IV collagenの免疫染色を行い、発現の度合いおよび発現部位に関する検討を行った。内訳はLST adenoma:8, LST cancer in situ:9, LST invasive cancer:13、PT adenoma:11, PT cancer in situ:9であった。するとLSTはPTに比較して、beta-catenin、cadherinの発現が粘膜内癌でも保たれており、同時にaPKCの発現も細胞質のみの弱い発現(染色強度1-2)であった。このような部位ではType IV collagen染色によって明らかとなった基底膜の存在も保たれており、aPKCの発現が弱い部位での腫瘍細胞の極性は保たれていることが確認された。一方PTでは腺腫の段階から極性の乱れが始まっておりaPKC染色も核内まで染色が明らかとなる染色強度3-4のものが多数を占めていた。すなわちaPKC発現は細胞の極性に関わると考えられるbeta-catenin、cad herinの染色と逆相関し、またaPKC強陽性の部位では基底膜の喪失が生じていた。LST typeであっても浸潤癌においてはこれらの極性は喪失しており、aPKCの染色強度は高くなっていた。aPKCの発現とbeta-cateninの発現には共同性が認められ、aPKCの発現強度がgrade1-2ではbeta-cateninの発現部位は細胞膜上に保たれていたが、grade3-4の部位では核内に移行していた。以上からaPKCの発現は大腸腺腫の比較的早い時期から認められる、浸潤癌になるほど強くなっていくことが示唆された。以上の内容を第100回米国癌学会のannual meetingで発表し成果を収めた。
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