研究概要 |
本年は前年の症例数に追加分のLST、 Polypoid type tumor症例を加えて、極性変化の検討を加えた。即ち極性の基底部を決定するType IV colagenおよび側面を規定するcadherin、また分裂の際に核内移行するbeta-catenin,の免疫染色を行うと同時に、Matrix Metalloproteinase-9 (MMP9)の発現を検討し極性決定因子との関連をみるとともにaPKC発現との相関を検討した。昨年同様LSTはPTに比較して、beta-catenin、 cadherinの発現が粘膜内癌でも細胞膜上に保たれており、同時にaPKCの発現も細胞質のみの弱い発現(染色強度1-2)であった。このような部位ではType IV collagen染色によって明らかとなった基底膜の存在も保たれており、この様な細胞が発現するMMP9の量は低値であった。即ちaPKCの発現が弱い部位では腫瘍細胞の極性は保たれMMP9発現が抑制されていることが確認された。一方PTでは腺腫の段階から極性の乱れが始まっており細胞の基底側のtype IV collagen発現は消失し、cadherinは消失または細胞内に染色され、beta-cateninは核内に移行していた。この様な細胞ではaPKC染色も核内まで染色が明らかとなる染色強度3-4のものが多数を占めていた。一方LST typeであっても浸潤癌においてはこれらの極性は喪失しており、細胞基底側のtype IV collagenは消失し、 aPKCの染色強度は3-4となっていた。aPKCの発現とtype IV collagenの喪失およびMMP9の過剰発現の間には正の相関があると考えられ、これに伴いcadherinの喪失、beta-cateninの核内移行と腫瘍細胞の分裂が引き起こされるものと考えられた。以上からaPKCの発現は大腸腺腫の形態形成に重要な役割を有するものと考えられた。以上の内容を第101回米国癌学会のannual meetinで発表し成果を収めた。
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