研究概要 |
前年度より潰瘍性大腸炎患者、クローン病患者の症例を増やし、末梢血を採血した。osteopontin(OPN)と他のサイトカイン、さらには炎症性腸疾患の病態に関して検討し、それらの相関性についてもさまざまな角度から検討を加えた。OPNについては、OPN抗体を用い、ELISA法により血中OPN値を測定し,その他のサイトカインについては、血清中のサイトカインプロファイルを、何種類かのBio-Plexサスペンションアレイシステムを用いて検討した。健常者についても数を増やし、同様に検討した。その結果、潰瘍性大腸炎患者、クローン病患者ともに健常者より、血中OPN値が有意に高値であった。また、健常者はOPNとCRP,WBC、さらに他の17種類のサイトカインと全く相関性がみられなかった。潰瘍性大腸炎に関しては、OPNは臨床程度の指数や多種類の他の炎症性サイトカインと強く相関した。一方、クローン病では、OPNと相関する他のサイトカインが潰瘍性大腸炎に比較して少なく、CRPやWBCと相関するサイトカインの数が潰瘍性大腸炎に比較して多数であった。以上より、OPNの血中濃度は潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の病態とくに活動性を反映していると思われるが、OPNに相関して上昇するサイトカインの種類は潰瘍性大腸炎とクローン病で異なっており、潰瘍性大腸炎とクローン病で病因・病態に違いがあることをあらためて示唆するものと思われた。一方、0PNと脂質代謝は密接な関係にあるといわれており、IBDの脂質代謝に影響を及ぼすマーカーを集団観察研究(retrospective cohort study)にて行ったが、潰瘍性大腸炎とクローン病ではとくに有意差が認められなかった。したがって、今後はさらなる統計学的処理を施し、IBDにおける薬物使用の影響が及ぼすfactorについて詳細な検討を行う予定である。
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