HeLa細胞およびDLD-1細胞においてM期におけるRhoGDIβの機能について検討した。前年度に樹立したN末GFP標識RhoGDIβを安定発現するHeLa細胞においてタイムラップス顕微鏡でM期を詳細に観察すると、対照細胞と比べてM期の延長および、M期の過程で細胞が一旦多数の小胞状になった後、細胞質分裂に入る異常なM期の増加など、RhoGDIβが機能的にM期に関与することがわかった。M期での役割をさらに検証するために、HeLa細胞において3種類のsiRNA(ノックダウン効果を確認済)を用いてRhoGDIβノックダウンのM期に対する影響を調べた。RhoGDIβノックダウンは単極分裂および多極分裂などの異常なM期の頻度を1.2~2倍増加させた。また、ノックダウン細胞のDNA量をフローサイトメトリーにより測定すると、偽8倍体などの多倍体化した異数性細胞の頻度が増加していた。 大腸癌細胞株DLD-1細胞においては、N末GFP標識RhoGDIβを安定発現する細胞のタイムラップス顕微鏡観察で、M期への影響に関して明確な結論は得られなかった。しかし、RhoGDIβノックダウン実験では、その程度はHeLa細胞におけるよりも小さかったものの、HeLa細胞と同様のM期異常を示す傾向が認められた。細胞間接着に対してはRhoGDIβノックダウンの影響は認められなかった。 今回の結果および既に明らかにしているRhoGDIβのcentorosome局在から、RhoGDIβがM期においてcentrosomeの機能に関連した極性制御の役割をもつことが示された。
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