研究概要 |
我々はこれまで、上皮系細胞株においてRhoGDIβがcentrosomeに局在し、M期の進行に関わっていることを明らかにしてきた。この結論に至るための重要な証拠として、RNAiによるRhoGDIβノックダウンによりM期のcentrosomeの数や配置が異常になるという実験結果があった。しかし、2010年中頃にこの実験結果の解釈に疑問を投げ掛ける報告がなされた。それは、RhoGDIはRhoファミリータンパク質の安定化に寄与しているため、RhoGDIαのノックダウンにより複数のRhoファミリータンパク質が分解され、その結果これらのRhoファミリータンパク質が関与する細胞内過程が間接的に影響を受けるというものであった。M期の制御にはRhoA, Rac1, Cdc42などの主要なRhoファミリータンパク質が関わっている。従って、RhoGDIαに非常にホモロジーの高いRhoGDIβのノックダウンがRhoA, Rac1, Cdc42の発現に影響を及ぼすかどうかが大きな問題となってきた。そこで、計画を変更し、この問題についてHeLa細胞において検討を行った。その結果、RhoGDIβのノックダウンはRhoA, Rac1, Cdc42の発現レベルには影響を及ぼさないことが確認でき、RhoGDIβがcentrosomeの機能の制御に関与するという我々のこれまでの結論を変更せずに済んだ。 RhoGDIβのリン酸化に関しては、これまでは、ウエスタン法でRhoGDIβを1バンドと見なしてきたが、詳細な検討によりHL60や血管内皮細胞ではRhoGDIβのバンドが少なくとも2本あり、両細胞で2本のバンドの量比が異なることがわかった。バンドの易動度の違いから、これらがRhoGDIβのリン酸化の違いに起因すると予想され、細胞種によりRhoGDIβのリン酸化が異なることが示唆された。
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