研究概要 |
歴史上、移植成績向上における3大要素とは、保存液の改良、外科医の技術革新、免疫抑制剤の導入であった。肝臓冷保存虚血再灌流障害に伴うMultidrug resistance protein 2(Mrp2)の生体内異物解毒機能障害は、Kupffer細胞由来のThromboxane A2が原因であることをHepatology2004.Aprilに報告した。また脂肪肝のMRP2の排泄機能は著明に障害されていた。そして、これはThromboxane A2合成阻害剤およびPPAR-gamma agonistの投与で改善した。術後肝のMrp2機能を改善し、生体内異物を胆汁に排泄できる保存液の探求を行った。 この命題に対するアプローチとしてまず以下の二点につき検討した。すなわち(1)冷保存後再還流時における肝移植片の機能評価に最重要な因子、(2)それを解決するために必要な保存液の組成の検討である。(1)の現時点における結果として、類洞血流の回復が完全に回復してもMRP2の機能が元に戻らないことを報告した(2008,JSR)。今後は疎血障害に伴うMrp2障害の重要性につきMrp2欠損ラットを用いて、脂肪肝の有無も含めて検討する予定である。(1)の検討から冷保存の再還流後のviabilityで最重要な問題は類洞血流の回復より、低酸素障害に依る肝細胞機能であることが示唆されたので、(2)の検討ではMrp2の排泄障害の改善を図るために、Mrp2排泄性のグリチルリチンをUW保存液に加えた。この結果、再還流時のMrp2の機能は改善した。同様の検討を他の保存液で行ったところ、Kyoto solutionとHTK solutionではその肝保存効果を認めなかった(JSR, in pres)。このメカニズムを解明することが次の目標であり、脂肪肝においても同様のメカニズムが関与するかを検討するのが次のゴールとなる。
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