研究概要 |
移植成績向上における3大要素とは(1)保存液の改良(2)外科医の技術革新(3)免疫抑制剤の導入である。われわれはこの保存液の改良方法を2004年のHepatologyに報告し、肝冷保存虚血再灌流障害ではMrp2を介した生体内異物解毒がKey eventであり、Kupffer細胞の活性化を抑えてMrp2の機能を補助することでグラフトの機能維持ができることを証明した。本研究ではMrp2を保護する意義の病態生理学的解明とその対策、脂肪肝グラフトの脆弱性の改善とマージナルドナーの拡大に焦点を置いた。本研究の最終的なゴールは、手術に伴う冷保存虚血再還流障害の予防、あるいは脂肪肝移植におけるグラフト不全を解決し、臨床で実用化することである。 本研究開始から、二つの大きな成果を得た。すなわち、20分温疎血におけるMrp2機能の不可逆性(2009,JSR)とMrp2機能保持に欠かせない保存液成分2種類の同定(2009,JSR)である。前者の実験結果は外科臨床におけるpringle法を強く支持すると同時にMrp2機能の重要性を示した。後者は冷保存虚血再還流モデルで保存液成分の検討し、UW液にグリチルリチン添加,Kyoto solutionにグリチルリチンとグルタチオンを添加するとMrp2機能が改善されることを証明した。グリシン、アデノシン、DBcAMPなどの添加物は効果がなかった。HTK solutionはどんな添加物を加えてもMrp2機能の維持に役立たなかった。現在、Mrp2の機能が維持し改善する添加物の候補として、genipin, builirubin, p-selectin阻害剤などを考えている。また、Mrp2機能に深刻な影響を与えるKupffer細胞活性化のイメージングのためにIntravital videomicroscopyによるソナゾイド貪食能力測定実験を平行して行った(Hepatology Res, in press)。脂肪肝グラフトの脆弱性に関する検討では、Mrp2機能の障害がpioglitazonで改善することを証明した。Mrp2欠損ラットにおける検討が終了すれば近日中投稿予定である。
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