研究概要 |
治療後の肝内局所再発でしばしば見られる肝細胞癌の治療抵抗性への形質転換(高度な浸潤・転移・増殖能の獲得)であるEpithelial Mesenchymal Transition(EMT)を,臨床検体を用いて明らかにするとともに,さらにin vivo実験系を用いてHCCのEMTに関する分子メカニズムの解明(HIF-1α情報伝達系の解析)を行い,それを防止するための分子標的を明らかにした. 【平成22年度研究内容】肝細胞癌(HCC)cell lineに対する低酸素(hypoxia)処理によるHIF-1α系の発現状況の変化やEMT様形態変化の有無について評価を行った.Hypoxia stressをかけることにより,HIF-1α系に変化を認め,細胞の形態やその発現マーカーにEMT様変化が認められることが明らかとなった.そこで,HIF-1α遺伝子の(1)wild typeと(2)degradation domainに変異が存在するmutant type(HIF-1αのdegradationが抑制),及び(3)degradation領域であるODD domainを欠失させることでHIF-1αの恒常的発現を認めるΔODD typeの三つの遺伝子発現ベクターを作成し,これを細胞に遺伝子導入することでHIF1αの詳細な機能解析を行った.その結果,癌のEMT化においてHIF1αがきわめて重要な働きをしていることを解明し,さらにその阻害剤を用いることでEMTが抑制されることを明らかにした.現在,論文投稿に向けて最終準備中である.
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