研究課題
本研究の目的は、胆管閉塞に伴う肝障害におけるPPARγの役割を解明し、治療への可能性を検討するものである。PPARγ作用薬である「15d-PGJ2」と、拮抗薬である「GW9662」をラットに投与し、その影響を確認する。さらに胆管結紮ラットの肝臓よりクッパー細胞を分離培養し、同様にPPARγ作動薬あるいは拮抗薬を用いて、クッパー細胞の活性化がどのように変化するかを明らかにしたい。今年度は、ラット胆管結紮モデルを使用して拮抗薬である「GW9662」(以下GW)をラットに投与し、これら薬剤のin vivoでの影響を確認した。評価する項目は、肝障害の程度、血管作動因子の評価などとした。ラットの胆管結紮モデル(Bile duct ligation;以下BDL)を作成し、GW投与の影響を確認した。具体的にはラットを以下の4群に分けて検討した。(1)Sham群(開腹操作のみ)(2)Sham+GW群(開腹時にGW1mg/kg i.p.を同時投与)(3)BDL群(胆管結紮切離)(4)BDL+GW群(胆管結紮時にGW 1mg/kg i.p.を同時投与)24時間後に血清および肝組織のサンプリングを行い以下の項目を評価した。まずは、肝障害の程度を評価するために、I.血中ALT、AST、総ビリルビン、ALPの測定。II.肝組織のHE染色による評価。III.門脈圧の測定を行った。さらに、肝障害の主要なメカニズムの評価をするためにエンドセリンやトロンボキサンなど血管収縮因子の産生亢進についての評価をreal time PCR法でおこなった。いずれも胆管結紮後に上昇し、GWを使用することにより、この変化がさらに増強することを確認した。これらのことより、PPARγが胆管結紮後の肝障害に重要な役割を果たしていることが確認され、PPARγの活性化は胆管閉塞に伴う肝障害治療のターゲットとなりうる可能性が示唆された。