研究課題/領域番号 |
20591609
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
波多野 悦朗 京都大学, 医学研究科, 助教 (80359801)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
新田 隆士 京都大学, 医学研究科, 助教 (40456877)
安近 健太郎 京都大学, 医学研究科, 助教 (00378895)
猪飼 伊和夫 京都大学, 医学研究科, 准教授 (60263084)
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キーワード | 肝細胞癌 / 小胞体ストレス / アポトーシス / JNK |
研究概要 |
肝疾患の進展、肝細胞癌の発生、増殖における小胞体ストレスおよびCHOPの役割を明らかにするため、以下の実験をおこなった。 実験1)ヒトの肝細胞癌手術標本を用いて癌部、非癌部のCHOPの発現をWestern blottingにて検討した。正常肝に比べB型肝炎、C型肝炎の障害肝でCHOPの発現は亢進し、癌部でも高発現であった。しかしながら、B型肝炎症例の非癌部にくらべ、C型肝炎症例の非癌部でCHOPは強発現しており、C型肝炎症例では慢性炎症に伴う小胞体ストレスの蓄積が発癌に影響する可能性が示唆された。 一方、小胞体ストレスに伴う発癌の機序は不明であることから、小胞体ストレスの下流に位置するc-Jun NH2-terminal kinase (JNK)に着目した。 実験2) N-diethylnitrosamine (DEN)誘導肝癌モデルラットに対して、JNK阻害剤(SP600125)を週1回皮下投与したところ、腫瘍数減少と生存期間延長を認めた。また、SP600125投与後のリン酸化Smad3の発現については、腫瘍抑制に働くC-terminally phosphorylated Smad3 (pSmad3 C)の発現が上昇するとともにその下流に位置するp21の発現も上昇していた。その一方で、腫瘍増殖に働くlinker-phosphorylated Smad3 (pSmad3L)の発現が抑制されるとともにその下流にある癌遺伝子c-Mycの発現も抑制されていた。つまり、SP600125投与により癌抑制に働くpSmadC/p21経路の亢進と癌促進に働くJNK/pSmad3L/c-Myc経路の抑制により腫瘍は抑制され、かつ生存期間の延長も得られたと考える。今後、小胞体ストレス制御およびJNKの抑制が肝細胞癌の発癌、進展抑止に重要であると考えられた。
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