研究概要 |
今まで我々のグループでは、マウス胎仔肝組織内の肝幹細胞(HPC)は、CD49f+/CD45-/Thy1-の分画に含まれることを示してきたが、その分画に含まれる細胞もさまざまな分化段階の細胞を含みheterogeneousであるため、より特異的な表面抗原マーカーを見つけ、それを用いてより特異的な肝幹細胞の特性解析を行うことが、この研究の目的である。 そこで、我々は胎仔肝で発現し成熟肝で発現を認めない膜貫通型タンパク質であるgp38に着目した。まず、胎生13.5日の胎仔肝よりCD49f+/CD45-/Thy1-の分画をsortingし、さらにgp38によるsortingを行い、CD49f+/CD45-/Thy1-/gp38+とCD49f+/CD45-/Thy1-/gp38-の分画に分け、特性解析を行った。gp38+の細胞は全体の1.7%程度とgp38-と比較して非常に少なかった。また免疫染色を行い、gp38-細胞がAFPとAlbumin, CK19を発現しているのに対して、gp38+細胞はAFPのみ陽性で、より幼弱であることが示唆された。さらにMTS assayにて、gp38+のほうがより高い増殖能をもつことが分かった。このように、gp38+分画の細胞のほうがより未分化な肝幹細胞であることが示唆された。このため、gp38+とgp38-の分画でDNA microarrayを行ったところ、gp38+分画でWnt4, 5a, 5b, 9a, 11などがgp38-分画より優位に発現しており、gp38+のHPCでは、Wnt signal pathwayの発現上昇があることが示唆された。ここで、gp38+分画細胞にWnt3a投与によるWnt signalの活性化を行うと、増殖能は有意に上昇するものの、分化傾向は示さず、Wnt signalの活性化は未分化の維持に寄与していると考えられた。
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