研究概要 |
胆道癌の治療は拡大肝切除術を主体とした外科的根治切除と術後補助化学療法を適切に組み合わせる戦略が現時点で標準的であると考えられる。化学療法の第一選択薬はゲムシタビン(GEM)である。肝切除術後患者に対する適切な薬剤投与量を明らかにするために、肝切除術後時間経過、残肝体積、及び肝機能と血中薬物動態との相関関係を検討することを本研究の第一目標とした。まず、雄性Wistarラット(175-235g)を用いて動物実験で検討した。H群:Higgins & Anderson 70%肝切除、S群:Sham手術(各群n=5)に分けた。H群の肝再生率は術後2日目52.6%、術後14日目104.6%であった。術後2日目にGEM24mg/kgを投与した場合の血中GEM濃度(ng/dl):H2群:12800±1129*,S2群:10120±696、術後14日目H14群:9092±942*,S14群:9706±930で、H2群はS2群に比べて有意にGEM濃度が高値を示し、肝再生後のH14群ではS14群と有意差を認めなかった。術後に投与されたGEMの血中濃度は肝重量、血液総タンパク濃度と負の相関を示し、総ビリルビン、ALT、クレアチニン値と正の相関を示した。この結果から、肝切除術後は手術侵襲、機能的肝体積の減少など様々な手術の影響によって薬物動態が変化し非肝切除例よりも肝切除例でGEM血中濃度が高くなる可能性が示唆された。現在、秋田大学医学部附属病院でヒト胆道癌患者に対してGEM標準投与量(1000mg/m^2)を投与し血中薬物濃度を測定している。(秋田大学医学部附属病院倫理委員会審査承認・医総第10-14号・平成21年3月30日・受付番号581)。
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