研究概要 |
胆道癌もしくは膵癌で手術を受け、術後補助化学療法としてゲムシタビン投与の同意を得た9症例の血中ゲムシタビン濃度を測定した。非肝切除症例は5例、肝切除は4例であった。化学療法開始までの期間は非肝切除例で中央値60日、肝切除例で中央値29.5日であった。全例ゲムシタビン1000mg/m^2を30分間で経静脈投与。経時的に採血し血中濃度を測定した。投与7日後に有害事象の有無を確認。肝切除症例では肝体積をCTにて求め、肝再生率を算出。非肝切除症例、肝切除症例ともに投与開始15分から30分にかけて血中濃度は上昇し、その後急速に低下した。ラットでは投与2時間後における血中濃度は10,283ng/mlであったが、ヒトの場合は、投与2時間後には両群とも検出感度下限となり、種による代謝速度の違いが示唆された。非肝切除群で15分後の血中濃度が平均14,046ng/ml、30分後が平均26,040ng/mlと投与終了まで上昇し続けたのに対し、肝切除群では投与開始15分後が平均16,875ng/ml、30分後が平均16,825ng/mlで最高血中濃度は非肝切除群より低値となった。最高血中濃度が13,200ng/mlと低値でもGrade3の有害事象が発生する症例もあれば、33,700ng/mlと高値でも有害事象を認めない症例も存在した。また、血中濃度と肝再生率にも相関は認めず、残肝体積が小さいことが、必ずしも重篤な有害事象に繋がらなかった。ラット実験と異なり、肝切除群における血中濃度が非肝切除群より高値になることはなく、血中にゲムシタビンが蓄積することもなかったが、肝切除症例では有意に重篤な有害事象が発生した。単純に「小さな肝体積=>高濃度=>重篤な有害事象」、と結びつけることは出来なさそうである。我々の仮説を証明するには今後、細胞内dFdCDP濃度の測定、hENT1の発現について検討する必要がある。
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