膵癌は、現在国内で癌死の第5位を占めるほどの主要な癌でありながら、最近30年間でほとんど予後改善(5年生存率がわずか3%のまま)が認められない。その主要な原因の一つとして抗がん剤や放射線に対する治療抵抗性が挙げられる。そこで、膵癌治療抵抗性に関わるmicroRNA(miRNA)の同定を目的として研究を進めている。 1.治療抵抗性膵癌細胞株の樹立とそのmiRNAの網羅的発現解析 平成20年度は当研究室で樹立したGemcitabine耐性膵癌細胞株を用いて、Bioarrayによる網羅的な解析を進めた。さらに定量的リアルタイムPCRにてmiRNAの発現データを検証し、膵癌治療抵抗性に関連する可能性があるmiRNAを絞り込んだ。さらに、個別のmiRNAにっいて発現増強あるいは抑制実験を行い、Gemcitabineに対する治療抵抗性を持つmiRNAを同定した。また、放射線耐性にっいても同様の検討を進めている。 2.ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルにおけるmiRNA定量解析 術後3年を経過し、生命予後や補助療法の有無、再発時期、再発形式、再発後の治療とその治療効果が判明している膵癌切除組織パラフィン包埋(FFPE)サンプルからRNAを抽出し、上記arrayによる網羅的解析などにより絞り込まれた複数のmiRNAの定量解析をリアルタイムPCRにて行った。その結果、生命予後あるいはその他の臨床病理学的因子に対して有意に影響を与えるmiRNAを同定した。 3.マイクロダイセクションサンプルにおける癌関連miRNA定量解析 平成20年度は、マイクロダイセクションを行って標的細胞のみを収集してRNAを抽出する作業を進めた。今後はFFPEサンプル解析により治療抵抗性との関連が特に強く認められたmiRNAの定量解析を行い、周囲の問質細胞の混在を除外した癌細胞レベルにおける発現異常を示すmiRNAを選別する予定である。
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