研究概要 |
【目的】 本研究では当科において新規に開発したタンパク発現の定量的解析法である(quantitative double fluorescence immuno-histochemistry:qDFIHC)を用いて、これまでの研究で得られた化学療法個別化の標的分子および既知標的分子のプロテオミックス解析による発現の定量化と臨床例における薬剤奏功性の関連に関してretrospectiveおよびprospectiveに検討する。 【方法】 S-1投与前に採取した胃癌生検標本(47症例)のTS,DPD,OPRT発現量および、gemcitabine投与を行い標本が採取可能であった再発・非切除胆道癌(10症例)に対してgemcitabine耐性遺伝子であるRRMIをqDFIHC法にて解析する。TS,DPD,OPRT,RRM1発現量およびOPRT/TS,OPRT/DPD,OPRT/TS+DPD比と腫瘍縮小効果および患者予後との相関を解析・検討する。 【結果】 S-1化学療法を受けた胃癌患者(n=47)において、TS,DPDは単独では有意差を認めなかったが、OPRTは単独で有意差を認めた(P=0.012)。感受性indexにおいて、OPRT/DPD比、OPRT/TS比、OPRT/(TS+DPD)比はすべて有意な相関を示した(P<0.001、0.0006、0.0002)。再発・非切除胆道癌(10症例)においてRRM1の発現はgemcitabineの臨床的効果と有意な相関関係を示した(p=0.033)。 【考察】 胃癌生検組織におけるOPRT,TS、DPD発現の定量解析(qDFIHC)によりS-1の抗腫瘍効果さらには予後予測が可能であることが示唆された。また、再発・非切除胆道癌においてもRRM1はgemcitabineの臨床的効果予測因子になりうることが予想された。また、胃癌、胆道癌における結果はそれぞれ論文投稿中である。
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