平成20年度の実験結果から、生体吸収性ポリマーの素材を変更し、エレクトロンスピニング法の条件設定にも変更を加えて、非吸収性線維のメッシュ状のニットと組み合わせたパッチを製作した。力学的な強度の測定を確認して植え込み実験用のパッチにすることに決定した。(担当:金森敏幸) 平成20年度と同じくラット右室流出路への植込み実験で組織再生について組織学的に検討した。平成20年度は移植後1~3ヵ月までの追跡であったが、今年度は植込み6ヵ月後までの長期的な変化を組織学的に観察すると伴に力学的な変化についても検討を加えた。組織学的には、内腔面は血管平滑筋細胞で覆われ、炎症細胞がパッチ内に侵入して、吸収性ポリマーの分解が進行した。時間経過とともにポリマー部分が肉芽組織に置換されて、6ヵ月後では生体吸収性ポリマーは平滑筋細胞や弾性線維に完全に置換された。再生組織の強度試験では、非吸収性線維のメッシュ状のニットの補強がないパッチでは、植込み早期に力学的に強度が低下したが、ニットの補強があるパッチでは全経過を通じて強度の低下が見られず、動脈への使用において安全性が高いと考えられた。(担当:渡辺弘)
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